腎移植について
腎移植とは
血液透析、腹膜透析、腎移植など腎代替療法のなかで、腎移植は透析療法よりも患者生命予後に優れていると言われています。腎移植を行うことによって透析療法を受けることなく、生活を送ることができます。腎移植は、腎不全を完全に治す唯一の方法です。
欠点としては、提供者(ドナー)がいなけば移植は成り立たない事です。また、日本は慢性的なドナー不足と言われています。ただそれでも年間1700例もの腎移植が国内で行われているそうです。
近年の生体腎移植は血液型不適合移植が30%と血液型が違っても移植は可能です。夫婦間移植が30%、小児を含む先行的腎移植が30%です。
ただし、体が他人の腎臓を受け入れられない場合があり、その場合は拒絶反応を起こして、せっかく移植した腎臓が働かなくなってしまうこともあります。最近では優れた免疫抑制薬が開発され、拒絶反応が起こる頻度はかなり低くなったと言われています。
ドナーとして一番最適なのは兄弟・姉妹からの提供と言われています。兄弟、姉妹からの提供は拒絶反応が起こるリスクが少なく移植した腎臓が長期的に保たれるというデータがあるそうです。
仮に親族・近親者の中にドナーになってもらえる方がいたとしても、提供するにあたりいくつか条件があるそうです。まず、第一条件として提供してくれるドナーが健康であること。ドナーには健康診断が必ずあり、初診から移植まで約半年以上かかるのが通常だそうです。家族であっても持病をお持ちの方はドナーになることはできません。
ちなみに、献腎移植(亡くなった方からの善意の臓器提供)の場合、移植できるまでの待機期間はおおよそ13年~15年と言われています。献腎移植には、日本臓器移植ネットワークへの登録と別途HLA検査料金が必要です。これも移植施設にて、患者さんの状態(感染症、悪性腫瘍、心血管系評価)を診察して登録業務をおこないます。
腎移植希望者適応基準
腎移植希望者適応基準として、
①末期腎不全患者であること
②全身感染症がないこと
③活動性肝炎がないこと
④悪性腫瘍がないこと
が挙げられています。もし悪性腫瘍にかかったことがある場合は、腎癌・膀胱癌・その他子宮体部・精巣・甲状腺・直腸・前立腺癌および悪性リンパ腫で、少なくとも2年再発がないことが重要です。子宮頸部癌、乳がんは少なくとも5年再発がないことが必須となっています。
これは移植手術後に必ず服用しなければならない免疫抑制薬によって、悪性腫瘍の発生の可能性が高まるからと言われています。移植後は拒絶反応が起こらないよう、かつ悪性腫瘍の発症を食い止め、早期発見をしていけるように定期受診検査が必要になります。
腎移植費用
生体腎移植の場合の概算費用を記してみます。移植医療は、初年度は費用がかかりますが、2年度以降は免疫抑制剤の費用のみなので、実に透析療法の10%の費用で済むと言われています。
①初診料 再診療
②各種検査費:HLA(タイピング+クロスマッチ):実費であり施設によって異なる。
他各種検査費用:施設によって請求方法が異なる。
③移植後1年間の総医療費:(手術、入院、退院後の投薬・検査など)で約600万程度
④腎移植のための入院費も実際は自立支援医療(更生医療)補助が受けられ、自己負担額は数万円で済む(差額ベット代などは別途)。生体腎ドナー費用は、原則実費だがレシピエント更生医療から返済(移植後)
腎移植は優れた治療法ですが、誰でも受けれるわけではありません。提供する側、提供をされる側にさまざまな条件があります。またせっかく、移植しても拒絶反応を起こし、再び人工透析へ戻ってしまう可能性もあります。免疫抑制薬による癌のリスクも高まります。しかし、腎不全を治す唯一の方法であることに変わりません。
さまざまなリスクが伴う腎移植、他者からの善意の提供なくして移植はできません。であれば頂いた臓器を一日でも長く活用できるように、もらった腎臓に負担の少ない生活を心がける。自己管理が大切と思われます。